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事業承継事例(2021年度版)

当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

大分市向原沖2-4-40 tel.097-552-2236

オリナスパック株式会社
"ある日、突然"会社を引き継いだからこそ、その苦労、難しさ、大変さを誰よりも知っている父。
だからこそ、しっかりと準備をして息子へ渡したいと、承継計画に乗り出した老舗の菓子包材メーカーは、親子二人三脚、心を通いあわせて未来を見据える。
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大変な時期に心の支えになってくれた息子のために、できることをする。

親/杉村繁さん

承継後の会社の姿を見据えて洋菓子分野の開拓にも取り組んでいく。

子/杉村祥弘さん

企業概要
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1947(昭和22)年に「菓子包材メーカー」として創業。沖縄から青森まで、個人経営の和菓子店を中心に菓子の包装袋を自社内で製造・印刷、小ロット提供し、顧客の信頼を得ている。

承継年表

1947年創業 2025年事業承継予定
▼2021年6月 2代目社長が71歳になるのを機に事業の引継ぎを計画し、県中小企業団体中央会による事業承継診断を通じて当センターに相談。
▼2021年6月 地区担当コーディネーターが事前ヒアリングで課題を掘り起こす。
▼2021年7~8月 センター・中央会・専門家(中小企業診断士)が承継における課題の整理、目標・対策を検討して、承継の設計図ともいえる「事業承継計画」を作成。

計画を立てる必要性を誰よりも知っていた

 「経営に関しては大まかには分かっていたけど、心構えはまったくしていなかったからもう頭の中はパニックでしたね。葬式のことよりも、明日からどうやって生き延びればいいのか、明日の手形はどうしたらいいのかと、本当に混乱していました」。
 代表取締役の杉村 繁さん(73歳)が、前身の「杉村商店」創業者である父親の清一さんが急逝したことよって会社を継いだのは48歳の時。昨日まで当たり前のように過ごしていた日常が180度変わり、ほぼ準備のないままに継いだ社長業を「自分の使命だ、と自らを奮い立たせることに必死だった」。
 菓子包材メーカーとして大分市中央町に創業したのは1947(昭和22)年。本社工場移転、「杉村紙業株式会社」と名前を変えたのち、現在の「オリナスパック株式会社」を設立。個人の和菓子店の包装材の製造と印刷を自社内で一貫して行い、小ロットで提供するという経営スタイルで、南は沖縄から北は青森まで顧客を順調に増やした。相手先に出向いて営業や宣伝を続けているうちに取引が始まり、その店主が次の客を紹介してくれるという、口コミの力も成長の後押しをしてくれた。
「信用される仕事をしないといけない、好んでくれる仕事をしろ。月並みだけど父親からずっと聞かされてきた言葉です。お客さんが、うちの袋を使って、よく売れるようになったと喜んでくれる。そういう仕事をしてきたという自負があるし、この仕事を息子が継いでくれることに感謝しています」。

父の本心を胸に留め、”織り成す”未来を実現する

 苦労を知っているからこそ必要だと実感した引き継ぎのための準備。一人息子で将来の承継者となる祥弘さん(42歳)を中心として、中小企業団体中央会とセンター、専門家の支援のもと「事業承継計画」を作成。自社製品を通じて日本の菓子文化向上に貢献したいという大きなテーマを掲げ、4年後の承継に向けた一歩を踏み出した。
 「改めて企業理念などを考えるきっかけになったし、それを言葉にできたことも、すごくよかったと思います」と祥弘さん。売り上げの立て直しと継続、既存顧客を大切にしながらの新規開拓、女性の従業員が長期的に働きやすい職場環境づくりを目標に、経営者の育成塾などの勉強会にも積極的に参加。親と子、信頼と実績が〝織り成す〞ものづくりの未来を、経営者として築き上げることを誓っている。
 「時代にフィットしいていて、お客さんが使いやすく、オリジナリティが出せる高品質の商品を、小ロットで提供できるのがうちの強みです。それを生かして、いずれは洋菓子分野にも挑戦し、和菓子との二本柱を作っていきたいと思っています」。
 支援の最終日、息子へ伝えたいことを文章にして、読み上げた繁さん。そこには、経営に向き合う姿勢、顧客に愛されるための心構え、そして大切な人との別れの際に支えてくれた息子への感謝の思いが手書きで丁寧に記されていた。「父の本心を聞くことができたのも、事業承継計画という機会があったからこそだと感謝しています。ずっと大切に持っていたいと思います」。

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オリジナルの包材を小ロットで受注できるのが最大の強み。栄養成分表示などめまぐるしく変わる食品表示基準にも対応しやすいと好評。

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和菓子に多く使われる色など、顧客のニーズに合わせた提案ができる社名付きオリジナルインクの品質や、細かな文字とデザインの印刷を可能にする版下製造の技術にも定評がある。

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輪転機をはじめ、箔押しや版下を作る機械など、年季の入った機械がいまだに現役。全国各地のご当地菓子や、地元で愛されている和菓子などの包装材がここで製造されている。

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ものづくり補助金で購入したスリッター。「女性が無理なく扱える機械は今後も積極的に導入していく予定です」と祥弘さん。まずは、一緒に働いている奥さんの潤子さん(38歳)が習得を目指す。

支援内容:事業承継に向けた「経営課題」の抽出と「中期経営戦略」の策定支援

長男の祥弘さん(42歳)は大学を卒業後、同社に入社し、現在は後継者として経営の先頭に立つ機会も多くなった。突然、会社を引継ぐことになった繁さんは、その苦労を経験したことから準備の大切さを実感しており、大分県中小企業団体中央会の事業承継診断を受けて当センターに相談。センター・中央会・専門家(中小企業診断士)が承継における課題の整理、目標・対策を一緒に検討して、承継の設計図ともいえる「事業承継計画」を作成した。

支援効果:日本の菓子文化向上を目指し、 新たな歩みを踏み出した

新たに経営理念『菓子用包材を通じて日本の菓子文化の向上に貢献します』策定し、行動計画として後継者の思いである「お客様にとってなくてはならない企業」「社員一同の生活の向上を目指す」も作成。3つの目標として「安定的な経営ができる売上規模となり、社員も増員し、業務に余裕を持たせる」「九州外の和菓子店の取引先を増やし、九州圏では洋菓子の取引先を増やす」「会社負担で、全社員と年1回の社員旅行」も定まり、社長交代に向けた新たな歩みが始まった。