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事業承継事例(2021年度版)

当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

別府市駅前町11-10 tel.0977-22-1465

有限会社明石文昭堂
湯の町の歴史文化と人々との繋がりを”誠実”という形で紡いできた『明石文昭堂』。
別府駅前で異彩を放つ文具店は今年で95周年。
両親から「思いを伝える」ことを教わった娘夫婦は清々しい表情で未来を描いていく。
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別府駅前に創業して 95 年、この先の歴史を娘婿に託します。

親/明石泰信さん

「明石姓」を受け継ぎ、先代の思いを未来に伝えていく。

娘婿/明石耕司さん

企業概要
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1927年4月創業。文具・事務機・OA 機器・画材・額縁の販売などの専門店。別府をイメージしたオリジナルインクや、創業95周年記念の『湯けむり文具函』など独創的な商品を展開中。

承継年表

1927年創業 2022年事業承継予定
▼2021年1月 別府商工会議所の経営相談会にて中小企業診断士から事業承継・引継ぎ補助金について案内があり、同会議所指導員を通じてセンターに面談依頼。2月、後継者の取締役登用、経営革新計画承認を挟んで支援を開始。専門家派遣により、後継者と共に事業承継計画の策定に着手。
▼2021年5月~ 創業95周年記念事業に注力。事業承継計画完成。10月、後継者夫妻が別府市役所の事業承継相談会に来訪。上記事業推進にあたっての補助金活用を相談。

別府の良さを伝えられる文具店を目指していった

 『明石文昭堂』が創業したのは、現代表・明石泰信さん(66歳)の父が生まれた1927(昭和2)年。祖父の代から始まり、95周年となる現在、親子4人で看板を守っている。
 「カドミウムレッドやウルトラマリンブルーなど、おしゃれな名前を呼びながら絵の具を補充する時は、満足感もあるし誇らしかったですね」。
 子どもの頃から手伝いをしていた泰信さんは家業を継ぐことに迷いはなく、大学卒業後に就職したのち帰郷。3代目として店の歴史を繋いできた。
 「自分の代になったら、別府の土地柄を伝えられるような、何か特徴のあるものを作りたいという気持ちはありました」。
 勢いを増したのは32歳。総工費1億円をかけた社屋の建て替えだ。「懇意にしている東京のデザイナーに依頼してロゴマークも新調。東京・銀座にある某文具店の地方版を目指しました。回廊のようなデザイン、外壁には光に応じて色が変化するラスタータイルを用いて、他の文具店とは違う都会の風が吹いているような店に仕上げました」。
 当時の別府では珍しかった海外製のシステム手帳をはじめ、高級志向の筆記具をいち早く取り入れたのも話題を呼んだ。
 革新的なアイデアで突き進む一方、社訓はあくまでも”誠実”。「地域に根ざし、一般の人に愛され使ってもらえる画材店、文具店にするために頑張ってきたような気がします」。妻の智子さん(65歳)も教職を辞めて以降、店の歴史を紡ぐ一員となり、中でも額装や接客を極めていった。

オリジナルのギフトBOXに、伝えたい思いを詰め込んだ

 いずれは、と思っていた承継が具体的に進み始めたきっかけは、持続化補助金を利用したオリジナル文具製造の取り組み。万年筆を中心に、別府の伝統工芸品や食品を詰め合わせた文具の定期便『湯けむり文具函』を通して伝えたいことは、関わるすべての人やものとの繋がり、地元別府への思いを未来へ残していく、ということ。承継者に受け継いでもらいたいテーマそのものをこの一箱に込めた。
 2人姉妹の長女・佳子さん(39歳)と結婚を決意した時から、「歴史を途絶えさえないためにも、ゆくゆくは自分が」と考えていた耕司さん(39歳)。佳子さんとの間に息子が生まれたのを機に養子縁組して「明石姓」を継ぎ、4代目承継の準備に入った。
 「作業の捗りやモチベーションの向上、アイデアが湧き出るなど、値段以上の価値をわかりやすく伝えることが大切だと思っています。書く楽しさや大切さ、思いが伝わることなど、時代の変化に応じながらも大事に繋げていきたいですね」。
 幼い頃から家業を見て育った佳子さんも、文具へのこだわりと生まれ育った別府に対して強い思い入れがある。
 「別府の風景は唯一無二のもの。次の100年に向けて、文具を通して別府の良さを伝え続けるだけでなく、ずっと別府で愛される店であり続けたいですね」と耕司さん。
 お互いの性格を知り尽くしているからこそ、あ・うんの呼吸で日々を重ねていく親子4人。それぞれのアプローチの仕方や個性は異なっても、同じ目標に向かってさらに突き進んでいく。

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別府をイメージしたオリジナルインクと便箋。「万年筆は、書く時に大事な人や風景を思い出すことができるもの」と佳子さんは語る。

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開店と同時に活気づく店内。かつて別府に短大の芸術科があった時代も朝から学生が画材や文具をここで購入していた。昔も今も、別府にとって、なくてはならない存在の老舗だ。

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オリジナル商品や厳選の文具、雑貨、食品などが詰め込まれた『湯けむり文具函』(数量限定)。年4回、季節ごとに届けられる文具の定期便だ。大切な人に伝えたい思いが、ここに詰まっている。

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「好きな色や飾る場所など、お客さんの希望を踏まえて作品を一番引き立てるものを提供しています」と佳子さん。額装の技術とセンスは智子さん直伝で、手先が器用な耕司さんも頼もしい担い手。

支援内容:事業承継計画策定支援と支援施策活用の提案

別府商工会議所来訪の代表者と面談。「事業承継補助金を使って承認予定の経営革新計画(オリジナル文具の製造・販売)を進める手順が知りたい」との相談。同計画は独自Webで温泉をテーマにした文具を販売するもので、持続化補助金の方が適しているとアドバイス。売場改装など将来のあるべき姿を見据えながらの後継者夫妻による挑戦であれば承継補助金も可能と説明、事業承継計画策定に向けた専門家派遣を提案、実施。

支援効果:親子間コミュニケーションの促進による現状と将来像の共有

長女の夫である耕司氏は大阪で勤めていたが、あとを継ぐ前提で別府へ戻り、長女と二人で当社を手伝っていた。当初、経営者保証や負債・資産については把握できていない様子であったが、事業承継計画策定の過程において内容を共有できた。また、経営改善の結果、法人のキャッシュフロー健全化見込みもあった中で支援が進み、新規事業も並行していたため、経営者としての知識やスキルを身につけていくきっかけをつかむことができた。