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事業承継事例(2021年度版)

当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

佐伯市弥生大字山梨子246 tel.0972-46-0350

染矢建築
自然乾燥材を使用し、日本の風土に適した木造建築・土壁工法を貫く職人肌の父と、伝統技術に誇りをもち、引き継ぐことを決めた息子。
親子間ならではの”もどかしさ”を経験しながらも、承継に向けた挑戦の日々が始まった。
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仕事の楽しさをより深く知り、自分らしい道を進んでほしい。

親/染矢賢一さん

呼吸するのが気持ちいい家を、いつの間にか教えられていた。

子/染矢智彦さん

企業概要
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民間を主体に木造和風一戸建ての建築にこだわる。自然乾燥材を使用した土壁工法を得意とし、「豊の国木造建築賞」特別賞を受賞するなど長年にわたって高い評価を得ている。

承継年表

1967年創業 2023年事業承継予定
▼2020年6月 1佐伯市番匠商工会を通じて、現経営者が「長男に継ぐ意思があるか確認をして欲しい」とセンターに相談。地区担当コーディネーターが事前ヒアリングで経営者の要望を掘り起こす。
▼2020年⑦月~ 当センター・商工会の経営指導員・専門家が、後継者の後継意思を確認。承継の時期決定の支援、承継や事業における課題整理、目標・対策を検討し、承継の設計図ともいえる「事業承継計画」を作成。

材料を見る目を養い、伝統工法で家を建てる

 現代表の染矢賢一さん(73歳)は職業訓練校を卒業して工務店で勤務したのち、1967(昭和42)年、19歳の若さで『染矢建築』を創業した。
 当時の家づくりの材料は新建材が主体。まだ、化学物質による健康への影響などは問題視されていなかった時代だが、「一生懸命に稼いで鍛冶屋さんから買った道具が、すぐに傷んでしまうから、新建材は使いたくなかったんです。逆に、柔らかい天然木は道具の入りがとてもスムーズで全然違うんですよ」と語る。徐々に、天然素材を使った日本の伝統的な木造建築・土壁工法にこだわりをもつようになっていったという。
 「1年でも年輪の多い木を使うべきだ」と、自ら山で伐採した木や原木市場で購入した原木(70〜150年生)を、作業場に運んでから4〜5年寝かせて自然乾燥、仕上がった順に使用していく。木の年輪を見て育った環境を知り、木の強さや弱さ、個性、クセを見極める。そして、その木の特性に合わせて適材適所に配するという職人技の妙。ベテランの先輩職人から譲り受けた鉋やノコギリ、ノミなど昔ながらの道具を駆使し、年間約1棟ペースの「手刻み」の仕事で木造の家を完成させる。一般的な木造家屋の倍ほどの木を使ってつくる家は「豊の国木造建築賞」の特別賞を受賞するなど、高く評価されている。「これ以上求めても、どうしても年齢的に時間が足りない。だから、今が自分の中でのこだわり
の最終形だと思っています」。

親子だからこその難しさも乗り越える

 完璧主義の賢一さんのもとで20代前半の頃から一緒に働くようになった長男の智彦さん(46歳)は、いずれ自分があとを継ごうと思っていることを口には出していたそうだが、お互いに親子だからこそ生じる甘えやもどかしさを感じる場面も多かったそう。「本音の部分を聞き出すのが難しかったから、第三者の人に確かめてもらいたかった」と、賢一さんは商工会の指導員を経由してセンターに相談した。
 「若い頃は父の仕事について特に思うことはなかったけど、今は引き継いで未来に残していきたいという気持ちが強くなっています」と智彦さん。ある住宅に出向いた時、息苦しさを感じて「帰りたい」と思ったことで、意識せずに暮らしていた木造の自宅の”心地よさ”を認識した。「あと何ミリ削ったら節が出るとか、遠くの立木を見て状態がわかるとか、材料を感覚的に判断できる目には到底敵いません。でも、自分だからこそできることがあるはずです。父とは違う方向から仕事に向き合っていければと思っています」。
 息の長いDIYブームでリフォームや増築など家に関しても手作りしたいというニーズは一定数あるが、屋根や壁などは素人ではなかなか難しい。そんな、プロの手を借りるべき大枠を自分が請け負うことで「ものづくりがしたい、という夢を手助けできるはずだ」と智彦さん。
 母・慶子さん(71歳)も見守る中、「楽しく仕事をしてほしい」とエールを送る賢一さん。”頑固”で”偏屈”な職人の父から息子へ、2023年に承継予定だ。

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今では入手困難な道具類も現役で活躍。賢一さんが先輩から譲り受けたものが多く、手入れしながら大事に使い続けている。

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古材を再利用するなど、環境にも配慮した佐伯市W氏邸の新築現場。木の良さを最大限に生かし、日本の気候風土に適した家づくりを得意とする『染矢建築』の職人の技で、1棟ずつ丁寧に造りあげられていく。

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「鉋を完璧に調整することができれば、驚くほどスムーズに削ることができる」。賢一さんの右腕として経験を重ねてきた智彦さんは、承継に向けて後継者育成塾等で経営も学んでいる。

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長崎県対馬市にある樹齢150年の山に見学へ。「長年耐えてきた木は、自らの力で修復する力がある。生きた木の強さを次世代の若者たちに伝え続けていきたい」と賢一さんは語る。

支援内容:後継者の意思を確認し、 承継時期を決定

現代表の染矢賢一さん(73歳)から「長男と一緒に事業をしているが、継ぐ意思があるのか、親子間では話が難しいので意思確認をして欲しい」と、佐伯市番匠商工会の経営指導員を通してセンターに相談があった。センター・商工会の経営指導員・専門家(中小企業診断士)が現経営者と後継者を交えて、後継者の後継意思を確認、承継の時期決定の支援、承継や事業における課題を整理、目標・対策を検討し、承継の設計図ともいえる「事業承継計画」を作成した。

支援効果:こだわりの土壁工法を 守りつつ、新たな取り組みに意欲をみせる

経営者の不安を解消し、2023年に長男・智彦さんの事業承継が決定。「こだわりの土壁工法、純和風住宅を守りたい」との現経営者の夢を、後継者が引き継ぐことが決まった。後継者も、「昔ながらの工法を守りつつ、新しいことにも取り組み、木の良さ、土壁の良さをPR、木造建築の受注を増やしたい」と意欲的。大分県主催の後継者育成塾を受講するなど、承継への準備を始めるきっかけとなった。