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事業承継事例(2021年度版)

当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

竹田市荻町恵良原1983-2 tel.0974-68-2333

株式会社髙橋工業
笑い声が絶えない家族が全員で話し合って決めたのは、次男を代表取締役とする組織体制と事業の法人化。
お互いの得手不得手を補い合ってきた兄弟は、父から学んだ左官業の技を守るとともに、大家族の未来を担う新たな一歩を踏み出した。
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仕事をしながら家族皆が仲良く、笑って暮らしてくれることが一番。

髙橋尚生さん

親父が突然入院した時に初めて、自分たちの責任と覚悟が生まれた。

髙橋覚さん

企業概要
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1981(昭和56)年に髙橋尚生氏が左官工事業を創業。近年は、生活様式の多様化や建築工法・資材等の変化によって、左官業を取り巻く環境が厳しい状況の中で、家族を中心に堅実経営を行っている。

承継年表

1981年創業 2021年事業承継
▼2020年3月 事業を2兄弟のうちのどちらかに引き継がせることを計画。
▼2020年4月  九州アルプス商工会を通してセンターに相談。
▼2020年6月 センターの専門家派遣により事業承継計画書策手支援を受ける。
▼2021年9月 株式会社高橋工業を設立。事業承継により代表取締役に次男覚氏が就任。

突然の入院がきっかけに 承継へと大きく進んだ

 「独立して約40年経つけど、息子に継がせたいという気持ちは特になかったですね。それよりも、自分の技術を磨き続けて、現場を完成させて、それが後世に残っていくことのほうが嬉しくて。本当に、自分はこの仕事が好きなんだと思うんですよ」。
 代々農業を営んでいた家に次男として生まれた髙橋尚生さん(66歳)は、"家を出ていく身として、自分の力で食べていくために"高校卒業と同時に愛知県名古屋市で5年間、左官職人として修行したのち帰郷。地元建設業勤務を経て、1981年、26歳の時に独立した。竹田市内を中心に隣県の熊本にも顧客をもつなかで右腕となる職人を雇用、次男・覚さん(38歳)、その後、長男・尚貴さん(40歳)も仕事を手伝うようになっていった。
 2人の息子との3人体制になってもなお、後継者については頓着がなかった尚生さんだったが、2020年2月頃、急展開のできごとが起きた。
 「親父が腰の骨を折る大けがをして、約2ヶ月間、入院したんです。抱えていた現場はとてもじゃないけど僕らだけで太刀打ちできるものではなく、年度末の忙しい時期でも応援に来てくれた職人さんのおかげで工期内に完了できて…。自分たちもなんとかやればできるという自信がついたし、話が前に進むきっかけにもなりました」。2021年9月、事業承継により代表取締役に就任した覚さんはそう振り返り、尚生さんもまた、「責任もって仕事を受けるためにも、これを機に世代交代したほうがいいだろう」と決意したという。

左官業の新たな挑戦は 家族の笑顔が何よりの支えに

 承継について何度も話し合いを進めてきた髙橋家。センターでの打ち合わせにも全員で通うなど、積極的に取り組んでいくなかで方向性を固めた。そして、実直で職人肌の兄に比べて「自分のほうが対外的なことが得意だから」と覚さんが代表権をもち、法人成りも決定。『株式会社髙橋工業』を設立し、家族総出の新たなスタートを踏み切った。
 今後、事務全般を手伝っていくみゆきさん(36歳)は「嫁いだ時から彼が継ぐだろうと思っていたから、全然不安はないし、上向きなことしか想像してないです」と笑う。そして、承継の手続きをしている途中、何度も覚さんのことを見直した場面があったと言う。「苦労しないと覚えないからってほぼ自分一人で頑張っていて。今まで行動力があるという印象は特になかったからびっくりしました(笑)」。
 市場的には規模が縮小傾向にある中で、同年代の同業者や異業種との情報共有や意見交換を積極的に行い、左官業の新たな可能性を模索し始めた『髙橋工業』。受け継いできた技術の向上に精進し、無形文化財の修復・修繕にも携わって経験を積む一方、SNSを利用した広報活動や、芸術性を追求した技法の確立と事業展開などにも期待を膨らませている。
 「2人の息子が協力しあう姿を見ることができて本当に嬉しいですね」と母・優子さん(64歳)。家族皆が幸せに暮らすことを願う両親の思いと、お互いに助け合い、補い合う兄と弟。「笑顔で仲良く過ごせばOK」と、大家族は心を一つに前進し続ける。

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柄の部分を変えたり、金属の部分を研ぎ続けたりと、大切に手入れされた職人の道具類に、歴史の重みが感じられる。

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家族皆が「丁寧な仕事ぶりで、実直なこだわり職人」だと声を揃える尚貴さん。子どもの頃から父の仕事を見てきたが、家業として手伝ううちに「ゼロから物を作る左官業の奥深さに気づいた」と語る。

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成果をPRし、新たな事業のきっかけを作るために、「ゆくゆくはSNSなどを利用した広報にも力を入れたい」と将来の展望を語る2代目・覚さん。家族の絆が後押しとなり、伝承と自らの技術向上を目指す。

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自宅の敷地内に立つ大きな納骨堂はコンクリート製で耐震性も抜群。自分たちが生業としている左官業の技術と先祖への感謝、代々へ受け継ぎたい思いを最大限に込めて、親子一丸で作り上げた。

支援内容:承継の手順と承継後の成長戦略について家族全員で検討

代表者の髙橋尚生さんが65歳になるのを機に、2人兄弟の次男である覚さんに左官業の引継ぎを計画。引継ぎ時期、引継ぎ時の各種手続き、個人事業から法人への組織変更にすべきか等で悩んでいた。九州アルプス商工会荻支所を通じて当センターに相談。センターと外部専門家と経営指導員とで支援チームを組み、髙橋さん家族全員と承継時期や法人成り等を検討。その結果に基づき、事業承継計画書策定支援を行った。

支援効果:承継を機に法人成りし、家族一丸で更なる発展を

家族全員での話し合いにより、次男の覚さんを後継者として正式に決定。個人か法人かで悩んでいた組織体制は2021年9月に株式会社として新たにスタートし、覚さんが代表取締役に就任。覚さんを中心に家族が一丸となって事業に取り組んで行く組織体制が整った。市場が縮小傾向といわれる中で、左官業の範疇を超えた芸術性を追求した事業やWEBを活用して新たなビジネスチャンスを生み出していくことの重要性を認識できた。