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事業承継事例(2021年度版)

当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

宇佐市南宇佐2218-1 tel.0978-37-3737

梅田家
全国約4万ある八幡社の総本宮・宇佐神宮の表参道商店街で80余年、名物「宇佐飴」の伝統の技を守り続けてきた『梅田家』。「大事にしてほしいという気持ちを受け取りました」。下ろしかけていた暖簾を引き継いだ承継者は、先代の技だけでなく、心までも受け継ぐ覚悟を決めた。
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うちのすべてを受け継いでくれる恵良さんの覚悟が嬉しかった。

羽賀勝弘さん

看板を先の世代まで繋ぐことが、私の最大の仕事だと思う。

恵良忠久さん

企業概要
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1941(昭和16)年に創業。国宝宇佐神宮の表参道商店街にある「宇佐飴」製造販売『梅田家』。由緒ある名物菓子は素朴で優しい甘みが特徴で、多くの参拝客に愛され続けている。

承継年表

1941年創業、2021年事業承継
▼2020年3月 後継希望者から相談を受けた金融機関担当者が支援センターを紹介、支援開始。宇佐商工会議所にも協働を要請した。
▼2020年5月 地主との交渉開始。センターから書面作成・提示、交渉ポイントを助言・支援するとともに、宇佐商工会議所指導員が、進捗を管理。
▼2020年12月 地主との承継者の5年間営業と土地貸借契約締結。
▼2021年2月 承継者による事業開始。

長年の"強い縁"が、第三者承継のベースに

 原料は麦芽と水飴だけ。シンプルだからこそ、口に含むと優しくて自然な甘みが溶け出していく「宇佐飴」。宇佐神宮の表参道商店街で売られている名物の起源は神宮の祭神・神功皇后の時代にまでさかのぼり、息子の応神天皇の御乳飴として母乳代わりに与えたと伝えられている。
 土産物店や飲食店が軒を連ねる商店街で「宇佐飴」を製造販売しているのは3店舗。その一つで通りのほぼ中央に位置する『梅田家』は、初代が1941(昭和16)年に創業したのち、2代目夫妻の羽賀勝弘さん(84歳)と留美子さん(80歳)が暖簾を守り続けていた。「いずれは息子が継いでくれる予定だったんです。でも状況が変わったので、以前からよく知っていて気心も知れている恵良さんに、引き継ぎの話をさせてもらいました」。
 承継の候補者となったのは、原料の納品業社に勤務して10年以上『梅田家』を担当していた恵良忠久さん(64歳)。「もし、引き継ぐ人がいなければ、自分に継がせてくれないだろうか、と前から羽賀さんに話をしていました。80年も原料一つ変えずに作り続けてきた伝統を、無くすわけにはいかない。終わらせたくない。その一心で、思い切ることにしました」。
 地元の他業種など数カ所からも承継の申し出はあったが、もともとお互いに〝強い縁〞を感じていた2人。「やるかえ?」「いいで」といった具合に意志を固めていき、2020年3月、金融機関担当者と支援センター、宇佐商工会議所の連携による承継への手続きが始まった。

”ずっと変わらない”を未来に残すための挑戦

 神社という特殊な場所で手続きは通常より複雑、煩雑ではあったが、地域に根ざした連携支援によりさまざまな課題をクリア。営業保証や土地貸借契約も交わし、2021年2月、正式に承継者となった恵良さん体制による事業が円満にスタートした。製造風景がお客さんから見えるようにガラス戸を設けたり、ちょっとした休憩ができるオープンスペースも新たに作った。
 「羽賀さんに教えてもらいながら作っているけど、匠としか言いようのない技術や見極めの難しさを感じる毎日です。でも、受け継ぐ決意をして、それを次の人に繋げていくことが私の仕事だと思っているし、この伝統を羽賀さん夫妻が本当に大事にしてきたこと、ちゃんと引き継いでもらおうという気持ちが伝わってくるから、私も本気でぶつかっていきたい」。最初こそ反対した奥さんのひとみさん(62歳)も、一緒に店を守っていく気持ちを固めたという。
 商品を作る日は店舗奥にある羽賀さんの自宅に声をかけ、指導を仰ぐ。手順やコツは掴んできたが、「最後の詰めがまだまだ」と苦笑する恵良さん。その姿を見守る羽賀さんは「体で覚えようと必死で頑張ってくれているからね。横にいるだけで安心だと言ってくれるから、私も気兼ねなく店に顔を出せるんですよ」と嬉しそうに語る。
 『梅田家』の屋号、年代物の機械、技術、味、そのすべてを受け継ぐために脱サラした恵良さん。次の世代へ渡していきたいという強い思いを込めた挑戦は始まったばかりだ。

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80年来、何ひとつ変えずに作り続けてきた神宮名物の商品。どれも原材料はシンプルで、口に含むと優しく自然な甘みが広がる。

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もち米と麦芽を煮詰めて作った水あめを機械で練ったあと、切り飴成形用の機械にセット。機械に乗せてから切った状態にするまでの手順ごとに手動でスイッチの切り替えを行う。

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でん粉と水飴、砂糖、かたくり粉のみを原料とし、伝統技法で製造している「宇佐もち」。「宇佐飴」に並ぶ名物として、「宇佐だんご」「ピーナツ飴」とともに多くの常連客に指名買いされている。

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経年の使用感はあるが、手入れは行き届き、大切に使い続けられてきたことを物語っている年代物の機械。思いが詰まった道具類を受け継ぐことも、恵良さんの大切な使命だった。

支援内容:地域に支えられて、 親族外による伝統承継

2代目である経営者夫妻が80代となり、事業の継続が困難であったところ、仕入れ納品業者担当者が「伝統の味をなくすわけにはいかない」と相談を持ちかけた金融機関から、当センターに支援が要請された。宇佐神宮内という特殊な立地のため、地域の区長、商工会議所との連携により、神宮との交渉指導や契約書面作成などの支援を実施。コロナの影響で遅延したものの、無事に承継完了し、客足も回復しつつある。

支援効果:連携の「前例」をつくった承継の新たな形と伝統の未来

地主との事業の契約関係が不明確な、前例踏襲が困難な状況であった。特に、神社境内内の借地、建物未登記、住居兼店舗であるなど、不動産に関する課題があり、センターでは不動産の処理と地主である神宮との各種契約書作成と交渉ポイントの助言・支援を行うとともに、金融機関が資金調達を支援するという、連携支援を実施。本件の承継手続きステップと、文字どおり「餅は餅屋」の連携は、高齢化が進む仲見世店舗で事業承継の「伝統」となりうる。