技術伝承の難しさ

事業承継の現場では、制度面の支援制度は整ってきました。しかし、技術の伝承が一番難しいのかもしれません。

 日本人の手先の器用さから、楽器づくりという分野でも歴史ある海外製品に負けないほどに作品がたくさんあります。弦楽器ではバイオリンやギター等でも世界的に有名な個人製作家が誕生しています。


 バイオリンでは、鈴木政吉さんが大正時代に、あのストラディバリやガルネリのクレモナ名器へ挑戦して、賞賛を浴びた話は有名です。ギターにおいても、国産品は外観や仕上げは素晴らしいが、音の面ではアメリカ製品との格差があると一般的に言われていました。しかし、近年では海外の著名なアーティストも使う素晴らしい作品が、日本人によって作られた例も増えています。


 大分県内にも技術力の優れた有名な個人製作家がいらっしゃいます。大手メーカーはそれぞれの部門別に分かれ、その部門の工程だけの技術を磨けばよいのですが、個人製作家は一人ですべてを行います。木材の選別、加工、膠などの接着剤の取り扱い、ラッカー等を使った塗装など、何百もの工程を一人でこなさなければなりません。実際にお話を伺うと、技術の伝承は非常に難しく、一人前になるには何年もかかるようです。


 モノづくりの世界は、よく料理に例えられるように、同じ材料でも出来上がりは全然味が違うという難しい業界です。つまり、自分の中で技術をしっかり昇華して新たなものを生み出す創造力がないと成功は厳しいようです。厳しい技術習得期間を終えても、年間制作台数は限られており、決してしっかり利益が出るという業種ではないようです。他の分野の技術者(職人さん)もそうですが、技術を伝承するには、周囲の支援がなければ、技術が途絶えてしまうというのが現実でしょう。すでに、日本の伝統的な技術で途絶えたという事例も沢山あります。このことは、現場を訪問して痛感しています。


 これこそ、事業承継は5年、10年かかるというお話をあらためて納得した次第です。事業承継の中でも知的資産の継承が一番難しいといわれる所以かもしれません。

​令和元年度補正予算 プッシュ型事業承継支援高度化事業

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